商店街は中小企業庁の調査でも分かっている通り、行政や地域住民から地域コミュニティの中心としての役割を非常に期待されています。
また、商店街は地域住民の憩いの場であり、娯楽の場であり、地域社会・文化の中心的であって、単なるお買物をするための場所を越えた存在であるべきとされています。
確かに古い時代の地域密着型商店街はそうであったかもしれませんが、長引く景気低迷の影響から売上げが大幅に減少し自分のお店のことだけで精一杯で、ナショナルチェーンのお店が増加した商店街が今までどおりのやり方で、地域コミュニティの核となることは非常に厳しいと考えられます。
高度経済成長期に賑わっていた商店街が実施するイベントは、主にお客様への感謝の意味が強かったと思われますが、現在商店街が行っているイベントの目的は主に集客です。
しかし、イベント自体は昔から同じ手法で行われているために、多くのイベントは商店主がお店を休んでまで実施しなければならないのが実情です。
イベントを実施してお客さんを集めても、自分のお店を休まなければならない。
このような状況で商店街の担い手不足はますます加速していくことが予想されます。
しかし、連合会では戸越銀座の知名度が高まってくるにつれて、商店街理事以外で商店街活動に関わる人たちが増えてきています。
例えば地域の大学や地域に住んでいるデザイナー、民間のまちづくり会社などです。
それらの地域の多様な主体との連携によって、今では商店街の理事達が商売をしながら片手間でしかできなかったこととは比べ物にならないほどの様々な事業を実施することができるようになってきています。
こうした活動を継続的に行ってきたことにより、地元商店街に誇りと愛着を持つ地域住民が増えてきており、何か役に立てないだろうかという申し入れを受けることも増えてきています。
また、地域住民が関わることによって商店街に求められる役割も増えてきています。
例えば防犯カメラの設置などです。
お客さんの安全を考えれば防犯カメラの設置は犯罪の抑止力としても非常に重要です。
しかし、商店街振興組合はその目的がスケールメリットを生かした商業振興であるため、販促に直結しない事業に関しての支出に対する理解を会員の皆様から得にくいのも事実です。
助成金を活用すれば設置まではできたとしても、ランニングコストが必要になるため、維持していくことが難しいという課題が残ります。
他にも、トイレや駐車場、休憩所を求める声が多いのですが、商店街の会費収入も減少していく中で商店街ができることは限られてきます。
戸越銀座商店街が現在直面している大きな問題点は、商店街の知名度が上がってくるにつれて、地域住民も含めたお客さんのニーズが多様化し、やるべきことが増え続けているにも関わらず、今までと同じ組織体制のままでそれらに対応せざるを得ない点です。
商店街が地域コミュニティの中心としての役割を担っていくことは、現在の商店街振興組合という枠組みの中では実現することが非常に難しいと思われ、事業を企画立案・進行管理するための組織体制を今まで以上に強化していくことが必須となり、地域の多様な主体との協働が不可欠となります。
実施する事業も多様化すれば事業予算も拡大していきます。
そのために、例えばストリート広告収入やフィルムコミッションなど、自主財源の確保も必要になります。
こうした、商店街を含むエリア全体でのマネジメントを行うことができる、新たな受け皿組織を設置することが急務となっています。